セミナーや研修会をお手伝いしていて、
しばしば、死別を経験したご家族へのケアについて、
質問を受けます。
喪失に対するさまざまな心理的・身体的症状を含む、
情動的(感情的)反応のことを「悲嘆」と言います
JOURNAL OF PALLIATIVE MEDICINEの「Top Ten Tips」シリーズに、
関連する回があったので紹介します。
悲嘆についてもう少し詳しく
悲嘆については色々な理論やモデルがあります。
その中の一つに、「位相説」というものがあるのですが、
悲嘆のプロセスを大まかに理解しやすいので紹介です。
悲嘆の過程 | 特徴 |
無感覚・情緒的危機 | 喪失直後から1週間程度に見られることが多い、急性ストレス反応 死を現実として受け止められない 喪失があたかも夢の中でのことのように感じられ、信じられない |
思慕と探求・怒りと否認 | 喪失を事実として受け止めはじめた時期に見られることが多い 喪失を認識する一方で、十分に認めることは困難で葛藤が生じる 喪失に対する否認や故人を探し求める行動なども見られる |
断念・絶望 | 喪失の現実が受け入れられる時期に見られることが多い 故人との関係を前提とした心のあり方や生活が失われたと認識される 絶望、失意、抑うつなどの感情が生じ、身体症状もあらわれやすい |
離脱・再建 | 故人に向けられていた愛着が離れる時期に見られることが多い 故人との思い出は肯定的なものとなる 親しい人間関係や環境の中で、関係性や役割の再建が行われる |
(Bowlby J: Attachment and loss(vol.3): Loss sadnesses and depression. Basic Bools, 1980より)
実際には悲嘆の過程は個々で大きく異なることや、
それぞれの過程を行き来するものではありますが、
大枠を捉えるために紹介しました。
コツを頑張って訳してみた!
- Bereavement is associated with an increased risk of death as well as other physical illnesses
死別により遺族の死や身体疾患のリスクが高まる - While most grief is a normal reaction to bereavement, grief can present as prolonged grief with significant impairment in function
悲嘆は死別に対する正常な反応ではあるが、生活機能への障害を持続的にもたらしうる - The Prolonged grief Disorder-13 (PG-13) Questionnaire assists clinicians as a diagnostic screen for pathologic grief and maps onto updated DSM-5 TR diagnostic criteria
PG-13は病的悲嘆のスクリーニングツールとして役立ち、DSM-5 TRにも対応している - Understanding anticipatory or predeath grief, in both the patient and caregiver, is essential to help the patient and caregivers prepare for the death
患者やケア提供者の不安や予期悲嘆を理解することは、死への準備のために非常に重要である - Grief and prolonged grief may be triggers for an episode of major depression, which may require different treatment than grief
悲嘆や長期化した悲しみが大うつ病エピソードの引き金になることがあり、悲嘆とは異なる治療が必要になることがある - While pharmacologic trials of medication for prolonged grief have failed to show any benefit, medication help with depression and psychotherapy can be effective for all these conditions
長引く悲嘆に対する薬物療法の有効性は臨床試験では示されなかったが、うつ病に対しては薬物療法が有効であり、心理療法は全ての症状に有効である。 - Several psychosocial interventions and therapies have been shown to have a modest beneficial effect on the treatment of grief and some can be provided by nearly every clinician
いくつかの心理社会的介入や治療法は、悲嘆の治療に中程度の有益な効果があることが示されており、ほぼすべての臨床家が提供できるものもある - It is important to refer to hospice care when able since it has been shown to mitigate the adverse effects of bereavement
ホスピスケアが死別の悪影響を軽減するため、ホスピスケアを利用することは重要だる - Choose your words wisely in the setting of grief; words may not be necessary and can be unhelpful
悲嘆状態にある方への言葉は慎重に選ぶ:悲しみの中では、言葉は必要ないかもしれませんし、役に立たないかもしれません。 - Professional grief can contribute to burnout and addressing this grief may help decrease symptoms of burnout and depression
仕事を通じての悲嘆は燃え尽きの原因となることがあり、悲嘆にに対処することで、燃え尽き症候群やうつ病の症状を軽減することができる。
何をして、何をしない方がよいのか?
この表は非常に参考になりますね。

あ、ここは英語のままなんだね
はい、気力がつきました・・・
まとめ
悲嘆、遺族ケアについて学んでみました。
このあたり、医師はあまり教えてもらうことがないですもんね。
こちらの本、是非手に取ってみてください。
他の本にはない切り口のトピックが多く書いてありますよ〜
(アイキャッチ 画像:PACUTASOより引用)