高齢者の終末期診療で、非常に多く遭遇する誤嚥性肺炎。
抗菌薬を点滴して絶食しておけば楽勝!なんて思ってませんか?
日常診療でよく遭遇する問題こそ、しっかり勉強しなくてはならない。
一方、言葉を選ばずにいうと「いつも通り」の惰性に基づくプラクティスで、
なんとなく対応できているようにも感じられてしまう。
今一度、終末期の肺炎について学ぶのに最適の一冊を紹介します。
どんな本?
あまり本題でないところからのコメントで恐縮ですが、まずはこの表紙ですよね。
だって、寿司ですよ!
地球最後の日には寿司を食べたいといつも答えています。
明日の緩和ケア実践には、全く不要な情報でした。
最近はユニークで医学書らしくない表紙の本も増えましたが、
この本はぶっちぎってますね。
ただネタとしだけでなく(寿司だけに・・・すみません)、
食べることに対するいろいろな思いを感じさせます。
「治療」という商業誌の特集を基に、
各分野の第一人者たちが大幅に書き足しパワーアップした一冊です。
編集の大浦先生は随分前から、
終末期に関連した意思決定や倫理的な諸問題について、
地道な活動をされている家庭医療専門医で私の尊敬する医師の一人です。
拠点とされている富山県は、海の幸に恵まれた地域というのも表紙の由来でしょうか。
どんな人にオススメ?
誰でも遭遇する臨床的問題なので、
初期研修医を含めた初学者は是非読んでみて欲しいですね。
一方、口腔ケアの重要性やポジショニングといった、
多職種でとりくむべきことなども情報豊富です。
私だったら看護師、セラピスト、管理栄養士、MSWといった
多職種で読み合わせしたいと思います。
この本の主な対象者は総合診療医を目指す若手を想定していると思いますが、
卒後10年目をこえた若手にもお勧めです。
だって、終末期の肺炎について、こんなに系統立てて学ぶ本はなかったので。
学び続けるベテランにもお勧めの一冊です。
勉強になったことは?
「誤嚥性肺炎は総合力で対応すべし!」という点でしょうか。
目次を見るだけで診断や抗菌薬治療だけでなく、
リハビリや倫理的な話など多くの話題が関わることが理解できます。
しかも家族指向性アプローチといった家庭医療の中核をなすスキルや、
同意能力を欠く患者の医療同意といった福祉的な知識についても言及されています。
これらの各論が有機的に繋がることで、質の高い誤嚥性肺炎診療が実現するのだと理解できました。
編集長の独断評価(5段階)
- 初心者向け:★★★★☆
- 臨床向け :★★★★★
- 研究向け :★★☆☆☆
- 教養度 :★★☆☆☆
- コスパ :★★★★☆
まとめ
圧倒的に臨床に活かせる1冊です。是非手に取ってみてください!