オススメの本

緩和ケアで鍵となる研究 森田達也

 日本の緩和ケア研究でこの先生の名前を知らない人はいない!というくらい、燦然と輝く森田先生の連載から生まれた本です。

 共同執筆者の多くが森田先生の元で学んだり、研究活動をされた先生方ですね。

 私も森田先生には様々な場面で相談させていただいており、こんなに偉い先生にも関わらず、気さくに相談に乗ってくださいます。

 特に緩和ケアのこれまでの潮流を聞かせていただくのが楽しく、まさに生き字引のような存在です。

どんな本?

 緩和ケア領域の研究論文って読むことありますか?専門的に緩和ケアを学ばない限り、なかなか読まないかもしれませんね。一方、「私は別に研究したいわけじゃないんで、論文読むのはちょっと・・・」と思っているとしたら、ちょっともったいないかもしれません。

 この本は緩和ケア領域における、研究と臨床をつなげてくれる本だと思います。特に、その研究の背景には世界中で同じような臨床上の課題に直面した緩和ケア提供者と、わかることを少しずつ明らかにしてきた研究者の物語があります。その巨人の肩に立って、目の前の患者さんにベストを尽くすという壮大な世界を感じさせてくれます。

 タイトルに添えてある、「臨床に活きる!」という言葉に違わない、臨床に活かすための論文の読み方とその研究の意義をわかりやすく解説してくれています。

どんな人にお勧め?

 本格的に緩和ケアを学ぼうと思っている方や、緩和医療専門医を目指す方にお勧めです。逆に、ある程度の論文の批判的吟味や統計を含めたデータの解釈などを理解した上で読んだ方がわかりやすいと思います。ただ、この辺りは周辺知識を理解してから読んだ方が良いのか、それともまずは読んでみて必要性を感じることで学ぶモチベーションになるのかは人それぞれでしょうね。私はどちらかと言えば後者です。

勉強になったことは?

 私はあまり研究活動に重きを置いてこなかったのですが、この本を読んで、自分の実践がどう言った背景に基づいているかを知ることができました。ROCカーブや非劣性試験、因果推論の方法といった研究や論文解釈の上での基本的な知識についても解説いただいているのは勉強になりました。

編集長の独断評価(5段階)

  • 初心者向け:★★☆☆☆
  • 臨床向け :★★★☆☆
  • 研究向け :★★★★☆
  • 教養度  :★★★☆☆
  • コスパ  :★★★☆☆

まとめ

 日本の緩和ケア研究者が、臨床に活かすために論文を読むとはどういうことか、示してくれている本です。

緩和医療専門医を目指す方や、より深く緩和ケアを学びたい方にお勧めです。