緩和ケアって、全く血液検査をしないと思われている時があるんですが、
実は意外と血液検査するときがあります。
状態変化の原因が介入可能な可能性があるときなど、
採血する時はイメージより多いかもしれません
特にがん患者の血液検査でチェックしておきたい項目の一つが、
高カルシウム血症がないか?
というポイントですね。
今回はそんな高カルシウム血症について、
FAST FACTsに聞いてみました。
FAST FACTs #151 Hypercalcemia of Malignancyからです。
背景
多く見積もると、がん患者の30%が高カルシウム血症を発症し、
これらの患者の約50%は、高カルシウム血症が補正されても、
3週間以内に死亡する。
この理由は、
高カルシウム血症はがんが進行した病状を、内分泌的にあらわす兆候である
とされています。
個別のがん腫、患者によって予後は幅があるのでしょうが、
病状の進行を懸念する兆候の場合があるということですね。
病態生理
高カルシウム血症は、肺、頭頸部、食道などの扁平上皮癌、
乳がん、腎細胞がん、リンパ腫、多発性骨髄腫といった、
がん腫に多いと言われています。
- 骨転移の直接的な影響による溶骨性高カルシウム血症
- 悪性腫瘍の体液性高カルシウム血症 – 悪性腫瘍による副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)の分泌
- 1,25(OH)2D(ビタミンD)分泌型リンパ腫
- 本物のPTHの異所性分泌(非常にまれ)
様々な病態によって、カルシウムが上昇することがわかります。
症状
高カルシウム血症の程度(補正値)および上昇の速さとほぼ相関します。
- 軽度 :10.5~11.9mg/dl
- 中等度:12~13.9mg/dl
- 重度 :>14mg/dl
ちなみにこれらはアルブミン値で補正した、補正カルシウムなので注意しましょう
高カルシウム血症により
認知機能:鎮静、せん妄、昏睡
消化器 :食欲不振、悪心、嘔吐
腎臓 :脱水、多飲多尿、口渇・多飲多尿
治療
抗がん治療が有効な場合は、効果の期待できる治療を継続する。
抗がん治療の効果が期待できない場合は、個別の患者の治療目標に基づき慎重に判断する。
治療困難な進行がんの場合、高カルシウム血症を治療しないという判断が、
適切な場合がある。
支持療法
補液およびループ利尿薬(利尿薬は脱水が補正されたから使用する)
カルシウムを上昇させる薬剤の中止(ビタミンD、サイアザイドなど)
ビスフォスフォネート:殆どの患者に選択される
以前は大量輸液が推奨されてましたが、
ビスフォスフォネートの登場で、
最近は強調されなくなってきました
まとめ
がん患者の緩和ケアでしばしば経験する、
がん患者の高カルシウム血症についてFAST FACTsに聞いてみました。
いや〜、いつも勉強になります!
このあたりの知識はこちらの本もおすすめです〜

(アイキャッチ 画像:PACUTASOより引用)