FAST FACTsに聞いてみよう!

FAST FACTsに聞いてみよう! 緩和ケアにおけるトラマドール #290

トラマドールという鎮痛薬があります。

WAGIが緩和ケアの仕事を始めた当時、

知らなかった鎮痛薬の一つです。

ここ10年でアセトアミノフェンとの合剤も発売され、

すっかり有名になりました。

そんなトラマドールについて、FAST FACTsについて聞いてみたので紹介します!

今回は、

FAST FACTs #290 Tramadol in Palliative Careです〜

概略

WAGI

トラマドール、ざっくりこんな感じ

  • WHOの疼痛ラダーのステップⅡの薬剤
  • FAST FACTs的にはタペンタドールと似ている
  • μオピオイド受容体と弱いモノアミン再取り込み阻害による鎮痛効果

代謝経路

トラマドールはプロドラッグで、

CYP2D6を介して薬理活性代謝物に代謝される。

90%以上が尿中に代謝されます。

腎障害がある場合は、投与量の調整が必要になる。

CYP2D6阻害薬(フルオキセチン、パロキセチン、アミトリプチリンなど)や、

CYP3A4阻害薬(ケトコナゾール、エリスロマイシンなど)と薬物相互作用がある。

WAGI

代謝経路は緩和医療専門医試験でも重要です

問題は公開されているので、しっかり勉強してみましょう〜

注意すべきこと

代謝が低下している高齢者は腎障害患者、

薬物相互作用により血中濃度が想定しているより高まると、

痙攣やセロトニン症候群のリスクが高まります。

WAGIの使い方

強オピオイドを使うほどでもない程度の強さの痛みの時に使うこともあるんですが、

WAGI

最近はあまり処方しなくなりました

理由としては、

  • 痛みが強くなることを予想して、最初から少量の強オピオイドを使用する
  • μオピオイド受容体と弱いモノアミン再取り込み阻害による鎮痛効果
    →下降疼痛抑制系を介した鎮痛補助薬のような効果が期待できるかも・・・
    とも思ってたけど、タペンタドールがあるしなぁ

って感じでしょうか。

この辺り、こちらの本も参考になります。

まとめ

今回はトラマドールについてFAST FACTsに聞いてみました。

Fast Facts 緩和ケアのUp to Date|緩和ケアに役立つあれやこれ〜緩和ケアの学び方ソムリエが送る耳より情報〜

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(アイキャッチ 画像:PACUTASOより引用)