FAST FACTsに聞いてみよう!

FAST FACTsに聞いてみよう! #37痒み

患者さんの痒みについて相談を受けたので、

FAST FACTsに聞いてみました。

FAST FACTs #37 Pruritusからです。

なかなか難渋する症状の一つです

不明の原因になったり、

患者さんのQOLを損なう症状である、

「かゆみ」に対する対応についてです。

緩和ケアにおける痒み(皮膚掻痒症)

FAST FACTsによる記載をまとめてみます。

終末期によくみられる症状で、しばしば苦痛を伴うものである

痒みは無髄のC繊維を介して皮膚の痒み受容体が刺激されることで生じる

皮膚に影響を与えずに中枢現象として生じることもある(例:オピオイド誘発性掻痒症)

ヒスタミンは痒みを生じさせるが、掻痒症の患者の多くはヒスタミン遊離兆候は示さない

ヒスタミン以外にも、セロトニン、プロスタグランジン、キニン、プロテアーゼおよび物理的刺激が掻痒の媒介物質として考えられている

WAGI

こういう、病態生理を理解することは、

非常に大切です!

緩和ケアで遭遇するかゆみの原因をまとめました。

痒みの原因
  • 皮膚関連(乾燥、湿潤、刺激、湿疹、乾癬)
  • 代謝関連(肝不全、腎不全、甲状腺機能低下症)
  • 血液関連(鉄欠乏症、多血症、血小板症、白血病、リンパ腫)
  • 感染症関連(疥癬、シラミ、カンジダ)
  • アレルギー(蕁麻疹、接触皮膚炎、薬物反応)
  • 心因性
  • 痒みと掻きむしりのサイクル
    掻くことで細胞がダメージを受け、その結果、さらに痒みが増す

どのように対応すれば良い?

WAGI

では、実際の対応を確認していきましょう

保湿剤を使用する

乾燥(乾皮症)は非常に一般的で、他の原因を悪化させることがある。

保湿することで痒みが軽減する。

乾燥が強い場合、ワセリンなどを使う(油っぽいと感じる患者がいる)。

オートミール風呂!?に浸かるという古い方法がある。

WAGI

オートミール?

あの筋トレする人が好きな食べ物?

初耳だったので調べてみました・・・

WAGI

まじか・・・・マジでオートミールじゃねえか・・・

使用経験がある方・・・教えてください。

冷却材を使用する

単純に冷湿布をすることも有効。

メントールなどの冷却材は軽度の痒み止めになる。

局所麻酔薬のリドカインとプリロカインの混合物(EMLAクリーム)も有効。

抗ヒスタミン薬

かゆみがヒスタミンの放出に関連している場合、抗ヒスタミン薬は有効。

末梢の抗ヒスタミン作用だけでなく、中枢作用もあると考えられている。

三環系抗うつ薬であるドキセピン(10~30mgを就寝時に経口投与)は、

非常に強力な抗ヒスタミン薬であり、難治性の症例に役立つ可能性がある。

(WAGI注:ドキセピンは日本にないです。多分)

ステロイドの局所投与

皮膚に炎症がある場合は、ステロイドの局所投与が有効。

乾燥を防ぐため、クリームではなくステロイド軟膏が適している。

ステロイドの全身投与は難治性の症例に使用される。

タクロリムス

タクロリムスの局所投与は、アトピー性皮膚炎の発疹、陰部の痒み、

結節性痒疹に関連した痒みの軽減に有効であることが示されている。

抗うつ薬

35件の研究のシステマティックレビューでは、

ほとんどの研究で抗うつ薬の投与開始による効果が示され、

全体的に良好な忍容性が認められた。

パロキセチンおよびミルタザピンが傍腫瘍性そう痒症に有効であること、

セルトラリン、アミトリプチリン、およびドキセピンが

慢性腎臓病に関連したそう痒症に有効であること、

セルトラリンが胆汁うっ滞に関連したそう痒症に有効であることが

研究で示唆されている。

オンダンセトロン

オンダンセトロンおよびその他の5HT3アンタゴニストは、

オピオイド誘発性、胆汁うっ滞誘発性、および腎誘発性の

そう痒症の患者に有効であることが示されている。

コレスチラミン

胆汁うっ滞性そう痒症の患者に効果がある。

ガバペンチンおよびプレガバリン

ガバペンチンおよびプレガバリンは、尿毒症性そう痒症、神経障害性そう痒症、

原因不明のそう痒症など、さまざまな難治性慢性そう痒症に有効であることが示されている。

オピオイド誘発性のそう痒症または胆汁うっ滞性のそう痒症に対する使用を支持する

決定的な証拠はない。

オピオイドアンタゴニスト

低用量(例:0.25~1ug/kg/hr)のナロキソン静脈内持続注入は、

成人および小児のオピオイド誘発性そう痒症患者において、

オピオイドの離脱を誘発することなく使用できる。

小規模な研究では、オピオイド誘発性のそう痒症における

メチルナルトレキソンの役割の可能性が示唆されている。

アゴニストとアンタゴニストの混合オピオイド(ペンタゾシン、ナルブフィン、ブプレノルフィン)も

オピオイド誘発性そう痒症を軽減する可能性がある。

まとめ

いや〜、今回のFAST FACTsもかなりのボリュームでした。

痒みについてはトワイクロス先生に聞いてみるのもいいですよ!

(アイキャッチ 画像:PACUTASOより引用)