非がん患者の終末期で、強い呼吸困難とともに、
症状が強いときにパニックのような様子の患者さん
どのように対応すればよいか?と相談を受けたことを思い出しました。
対応も難しいし、
見ている方も辛いです・・・
そういえば、FAST FACTsにはなんて書いてあるんだろう?
と思って調べてみました。
FAST FACTs #145 Panic Disorder at the End-of-lifeからになります。
終末期ケアとパニック発作
一般的に病状が切迫し、死が差し迫った患者は、
不安や恐怖を感じるのは通常のことです。
一方、生活に支障を来すような不安や、パニックは、
正常な死へのプロセスとは言えない。
死に関連した不安と、病的なパニックを区別することは、
緩和ケアにとって重要である。
正常反応との乖離を見極めるのが重要です!
定義:DSM-Ⅴより
パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に、以下の症状のうち4つ(またはそれ以上)が起こる。
1 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
2 発汗
3 身震いまたは震え
4 息切れ感または息苦しさ
5 窒息感
6 胸痛または胸部の不快感
7 嘔気または腹部の不快感
8 めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
9 寒気または熱感
10 異常感覚(感覚麻痺または熱感)
11 現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
12 抑制力を失うまたはどうかなってしまうことに対する恐怖
13 死ぬことに対する恐怖
FAST FACTsはDSM-Ⅳからの引用だったのですが、
ここではDSM-Ⅴに入れ替えています。
FAST FACTsの中で、参考になった記載を紹介します。
終末期の患者さんは、病気のプロセスの一環として、身体的症状の多くを抱えていることがある。そのため、終末期患者のパニック障害の診断には、脱現実化、脱人格化、コントロール喪失の恐怖の存在がより有用である。
患者が再発性の症状を呈し、将来の「発作」を心配し、そのような発作を予期して行動を変えている場合、パニック発作の診断を支持する。
慢性的な呼吸困難を抱える終末期の患者は、しばしば “窒息死 “を心配する。
窒息死の恐怖・・・辛いでしょうね
対応
身体状態が悪化している中で、
明確なストレス要因がある場合は対応が難しいんですよね・・・
いくつかの対応をまとめてみました。
- 診断を患者と共有し、適切な治療によって症状が大幅に緩和できることを伝える
- 疼痛、非疼痛症状(特に呼吸困難)、抑うつなどの症状に対する医学的管理を最適化する
- 医学的治療と訓練を受けた心理士によるカウンセリングを組み合わせる
- 音楽療法、マッサージ療法、誘導イメージ法、バイオフィードバックなどの補完的な治療法も検討する
- 医学的管理は、予想される寿命とパニック症状の重症度に影響される
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の単独療法、または低用量のベンゾジアゼピン系薬剤による3~4週間の増量療法(3週間後にベンゾジアゼピン系薬剤を漸減)が、数週間以上の寿命が見込まれる患者に適応となる
- SSRIは、治療開始後数日間、一部の患者で不安を悪化させることがある。このような場合は、最初の数週間は必要に応じてベンゾジアゼピンを追加することを検討する
- 予後が数日から数週間の患者では、ベンゾジアゼピン単独療法を検討すべきである
- 低用量の長時間作用型ベンゾジアゼピン療法をスケジュール通りに行い(例:ジアゼパム1mgを12時間ごとに投与)、急性のパニックに対しては短時間作用型ベンゾジアゼピン(例:ロラゼパム0.5mgを4~6時間ごとに必要に応じて投与)を検討する
- 末期患者の多くは、治療を中止すると再発率が高くなるため、残りの寿命まで維持療法が必要である。治療を終了しようとする場合には、再発を早期に発見できるように、数週間かけて徐々に服薬を減らしていくことが推奨されます
- ベンゾジアゼピン系薬剤の治療を突然終了すると、しばしば強い反跳不安が生じることがある。これは、病状が進行し、内服ができない場合に起こる可能性がある。このような場合には、代替の薬物投与経路(ジアゼパムゲル、ジアゼパム直腸坐剤またはジアゼパムもしくはミダゾラム輸液)を使用する
まとめ
なかなか難しい対応を迫られる症状。
対応を急ぐ状況も多いので、
予測したマネジメントがより求められますね。
こちらの本も、心療内科的なアプローチも含めて、
参考になりますのでぜひ読んでみてください!
(アイキャッチ 画像:PACUTASOより引用)