FAST FACTsに聞いてみよう!

FAST FACTsに聞いてみよう 薬の減らし方 その1

予後が短い患者さんを担当しているとき、

しばしば悩まされる問題があります。

それは、、、

WAGI

この薬、いつまで飲んでもらった方がいいのかなぁ

というものです。

我々の担当する患者の多くは高齢者で、

併存疾患があることが通常です。

そうなると・・・

降圧薬や血糖降下薬など、このまま飲み続けるのが良いのか?

という判断に迫られます。

しかも、この辺りのコミュニケーション、

意外と難しいんですよね。

今回は薬の減らし方について、

FAST FACTsに聞いてみました。

FAST FACTs #321 Deprescribing

からになります。

Deprescribingとは

直訳すると、「脱処方」ですが、

日本語のニュアンスとしては、薬を減らすというほうが伝わりますね。

FAST FACTsでは以下のように説明されています。

患者の生存期間が短くなるにつれて、

慢性疾患の管理に使用される薬剤を中止する

体系的なプロセス

なるほど、すっきり言語化していただけました。

WAGI

この「〜〜〜なプロセス」というあたりが、

米国っぽいですよね

なぜ終末期には薬をやめるのか?

そもそもなぜ薬をやめないといけないのでしょうか?

それは、 残された時間が短くなるにつれて、

徐々に、薬を続けることの

メリットが少なくなり、デメリットが多くなる傾向があるからですね。

この点、次のように解説されています。

研究によると、アスピリン、抗高血圧薬、スタチンなどの予防薬の使用率は、余命が限られている患者では29〜51%であることが示唆されているが、これらの薬の効果が期待できる期間は、患者さんの予想生存期間よりもはるかに長いかもしれない。

いろいろな薬は内服を継続する期間の中で、

集団として一定割合での予防・治療効果を発揮するのですが、

終末期ではあまりその有効性が発揮できないのです。

さらに、

薬の負担は、終末期の不必要な副作用や

コストにつながる可能性があります

というデメリットも述べています。

WAGI

継続する薬と、安全に中止する薬を

きちんと見分ける必要があるのですね

薬をやめることを検討すべき状況

スパッと基準を作って解決!とならないのが、

この分野の難しいところですが、

以下のような点が強調されています。

特に薬物の副作用が疑われる場合には、

生命を脅かす疾患を持つすべての患者

(例えば、1年以内に死亡しても臨床医が驚かないような患者)において、

処方解除を検討すべきである

この1年以内に死亡しても驚かないという点は、

サプライズ・クエスチョンを意識した記載ですね。

処方中止としてしばしば議論になる薬としては、

以下のようなものです。

  • アスピリン
  • 抗凝固薬
  • 降圧薬
  • スタチン
  • 血糖降下薬
WAGI

この辺りの薬は処方されている患者さんも多いですからね

薬をやめる障壁

でも、実際に薬を中止するって、

意外と大変なんですよね。

どんな大変さがあるのでしょう。

薬の中止を提案したら、

「治療を辞めるのですか?」と

びっくりさせてしまいました

こんな経験ある方、いらっしゃいますよね。

意外と実践できない、

薬をきちんと辞めるというプラクティスの

障壁はなんなのでしょう?

FAST FACTsで真っ先に出てきたのは次のフレーズでした。


長期にわたる薬に対する心理的な愛着は、

処方中止の大きな障壁となる可能性があります。

特に、患者が予防薬を長期的な健康のために

必要だと考えている場合はなおさらです。

これは患者の立場に立つと、なるほどなぁと思いますよね。

さらに、メッセージ性の強いコメントとして、

臨床医が患者の健康全般についての大きな背景を知らないまま、

薬の中止を勧めた場合、コミュニケーション上の問題が生じる可能性がある。

このような場合、患者やその家族は、

予後が短いと予想されることが

処方中止のきっかけになっていることを知らないかもしれない。

やっぱりなかなか難しいですね。

その他にも、

  • 薬を中止する対象者の抽出が難しい
  • 薬をやめたせいで悪化した場合の訴訟を避けたい
  • 薬をやめることへの責任を医師が負う

といった障壁が紹介されています。

まとめ

以上、終末期に薬をやめる大切さと難しさについて、

FAST FACTsに聞いてみました。

この難しい問題にどのように対処すれば良いのでしょうか?

次回、続いて聞いてみたいと思います。

この分野ではやっぱりこの本、オススメですよ。