医療者向け情報

FAST FACTsに聞いてみよう! 医療従事者のバーンアウト Part2 #168

FAST FACTsでの学びを紹介するシリーズです。

今回はこちらの続きになります。

まだ読んでない方は、先にこちらを読んでみましょう!

FAST FACTsに聞いてみよう! 医療従事者のバーンアウト Part1 #167|緩和ケアに役立つあれやこれ〜緩和ケアの学び方ソムリエが送る耳より情報〜

緩和ケア界のUp to DateであるFAST FACTの中から、 私の学びを少し共有するシリーズです。 FAST FACTsってなに?って方はこちらをご参照ください。 医療者ってすごい頑張って、時には自己犠牲的にもケアに取り組むのに、 自分自身のケアについては学ぶ機会がないんですよね。 私自身もあまりメンタルヘルスについて関心を持ってなかったのですが、 私が通っていたビジネススクールでは、 「リーダーシップとメンタルヘルス」 という授業があり、 部門を運営するうえで患者・家族だけでなくメンバーの健康も大切だということと、 メンバーの健康を守るためにはメンタルヘルスの知識も必要ということを強く感じました。 ちなみに、この時に教えていただいた佐藤先生の著書で、 私が大好きな本がこちらです。 前置きが長くなりましたので、ここから本題です。 今回、勉強がてらFAST FACTsにある「医療者のバーンアウト」について勉強したので、 内容をちょっとばかり共有です。 原著は こちら(FAST FACTs #167 HEALTH PROFESSIONAL BURNOUT – PART 1) にあります。 PDFでダウンロードできます。個人的には超重要な領域と思いますので、是非読んでみましょ〜。 米国の調査を根拠に述べられていますが、一般的な労働者と比較して、 米国の医師はバーンアウト率が高いそうです。 特に、 治療・ケアの最前線に従事する医師(救急、プライマリ・ケア) 苦痛などの感情や苦悩にさらされる現場(緩和ケアなど) の2つの医療現場でのバーンアウト率の高さが例としてあげられました。 あら、、、両方やってるわ。わたくし・・・。 仕事上の慢性的なストレスに対する心理的な症候群 過剰で長期にわたるストレスによって引き起こされる精神的もしくは肉体的な疲労状態 気付いたらバーンアウト・・・みたいにならないためには、気づくのが大切ですよね。 そのためにはどのような兆候(症状)があるのかを知っておくのが重要です。 A predominance of mental or emotional exhaustion,

FAST FACTsって何?って方は、こちらをみて下さい〜

Fast Facts 緩和ケアのUp to Date|緩和ケアに役立つあれやこれ〜緩和ケアの学び方ソムリエが送る耳より情報〜

緩和ケアの実践で疑問が思い浮かんだ時、パッと調べたい時ってありますよね。 そんなときの強い味方が、Fast Factsです! Fast Factsは米国のWisconsin大学の緩和ケアグループが管理しているホームページ内にあり、 400以上の緩和ケアに関するトピックに対するコンパクトなまとめが掲載されています。 トピックの例をいくつか挙げてみましょう。 #1, 終末期せん妄の診断 #15. 便秘 #20. オピオイドの増量 #30. 予後予測 #125. PPS(The Palliative Performance Scale) これらは、緩和ケアではかなりメジャーなトピックですね。こういったトピックが1〜2ページ程度の分量でまとめられています。 さらに、以下のような緩和ケア領域特有の問題としては、以下のようなトピックでしょうか。 #23. DNRオーダーの議論 #46. 悪性疾患による皮膚潰瘍 #148.リドカインパッチについて #306. 緩和ケアにおけるメラトニンの役割 #322. 終末期におけるスタチンの中止 いかがですか?一般的な内科の教科書にはあまり触れられていなかったり、なかなかまとまった資料のない領域ですよね。こういった、”痒いところに手が届く”情報源として、私は愛用しています。 特別な契約やアカウント作成は必要ありません。 なんと、無料なのです! そして、各トピックはPDFがダウンロードできます!これは使わない手はないですよね。 ご自身の学習や、勉強会などに是非是非ご活用ください。

さて、FAST FACTs #168 HEALTH PROFESSIONAL BURNOUT – PART 2です。

バーンアウトの各段階の症状

ストレスの警告症状(Stress Arousal):不安、イライラ、高血圧、歯ぎしり、不眠、動悸、物忘れ、頭痛など。

エネルギーの温存(Enerfy Conservation):遅刻、先延ばし、恨み、朝の疲労、社会的引きこもり、アルコールやカフェインの消費量の増加、無気力など。

疲弊(Exhaustion):慢性的な悲しみ、落ち込み、慢性的な胸焼け、下痢、便秘、精神的・肉体的な慢性疲労、社会からドロップアウトしたくなる。

(FAST FACTs #167 HEALTH PROFESSIONAL BURNOUT – PART 1より引用、意訳)

難しいぞ・・・この領域の英語。

定訳とかあれば教えて欲しいです。

WAGI

こういった症状に注意することが大切なんですね

生じる影響

バーンアウトによって生じる影響は多岐にはわたるのですが、

印象深かったものを紹介します。

精神疾患の発症(うつ病、不安など)

物質関連障害(アルコール、違法薬物)

自殺

脱人格化(depersonalization)

診療の質の低下:長時間の労働、医療ミス、患者への共感の低下

(FAST FACTs #168 HEALTH PROFESSIONAL BURNOUT – PART 2より抜粋、意訳/改変)

当然のことながら、防ぎたいことばかりですね。

個人としても医療全体としても、バーンアウトが及ぼす影響の大きさが伺えます。

脱人格化って?

ちょっとわかりにくいかなと思うので、ここだけ解説です。

FAST FACTsの解説では、

脱人格化:Depersonalization

Attempt to create distance between self and patients/trainees by ignoring the qualities that make them unique individuals.

患者や学習者の個性を無視することで、自分との間に距離を置こうとすること

ちょっと訳は自信ないですが、私の理解の範囲で例をあげてみます。

「患者の個別の事情に配慮する余裕がなくなり、事務的な対応に終始する」

「職場の同僚や患者と会話することに意味を感じなくなってしまった」

みたいなところかなと思います。

詳しい方、是非コメントください。

まとめ

今回はどんな症状、兆候に注意すれば良いかを学びました。

このシリーズはあと2回、最後まで読んでいきましょう!

WAGI

次回からは予防や介入についてです。

最後に本の紹介

以前、私も特集に関わった本は医師向けですが、

結構ユニークな特集に仕上がったので、ついでに紹介させてください。

雑誌なのでなくなり次第入手困難になります。

前回紹介した、グロービス経営大学院の佐藤先生との共同企画です。

(アイキャッチ 画像:PACUTASOより引用)